マサハルさん
「あら、どうして、親御さんは来られないのかしら?」
「父はいつも帰りが遅いですし、すぐにでも謝りに来たほうがいいと思いまして……」
僕は相手の言葉を額面どおり受け止め、正直にそう言った。
その時だった。
僕が言葉をまだいい終わらないうちに、鼻で笑ったような音がした。
頭を下げたままの僕には分からない。
ハナの手は汗ばんできている。
「お母様はいらっしゃらないの? やっぱりねえ、母親がいないとねえ……」
僕はその声に、明らかな嘲笑を感じた。
ハナも今まで以上に手を強く握ってくる。
そして、僕は理解した。
ケンカの原因。
それは、この母親の影響を受けた子供が、ハナに対し、シズカさんが不在であることを言ったのだろう。