マサハルさん

ハナには「サヨナラ」を言わないつもりだ。

「離れる」というその意味が、理解できるのか出来ないかはわからない。

いや、きっと、もう出来るだろう。

それならば、イタズラに悲しませなくてもいいだろう。

それよりも、寂しがるハナを慰め、僕がいなくなる理由を困りながら説明するのは彼らの役目だ。

そう、彼ら。

マサハルさんと、戻ってきたシズカさんの役目だ。



僕にとって、この一年はハナの(もしくはマサハルさんも含む)親代わりのつもりだった。

振り返ってみれば確かにいい経験だったと思う。

これから一人で自炊する僕には、格好の予行練習だった。

だけど、それだけでは割り切れない部分もあるのは確かだ。

だから、その不在だった穴を埋めるべく、彼らには頑張ってもらわないといけない。
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