マサハルさん
芯の折れてしまったシャープペンを投げ出し、ノートから腕を引き剥がす。
そして、父親の待つリビングへと向かうことにする。
このまま無視してもいいが、きっと、僕が行くまで叫び続けるんだろう。
椅子から立ち上がると、短パンも汗でへばりついていた。
「見てくれよ、これ!」
僕がリビングに入ろうとすると、父親は嬉しそうにそう言った。
エアコンが入っているにも係わらず、もう薄くなった、いわゆるバーコードになってしまった頭に汗を掻き、その汗がリビングに差し込む太陽の光を反射して、キラキラと爽やかに、煌くわけはなく、どりっとした、気持ちの悪い光沢を放っていた。
高く掲げた両手には、自分のスーツのズボンが握られている。
「アイロン、掛けたの?」
僕のその声に、ズボンの股の部分から顔を出すと、嬉しそうに、何度も何度も首を縦に動かした。
僕はその動作が、小学校の修学旅行で行く「くま牧場」の、年老いたツキノワグマのように見えて、ため息をついた。
「おしりのとこ、線が2本になってるよ」
「うおっ!」