マサハルさん
マサハルさんは、終始、緊張していたが、とても嬉しそうだった。
柊が帰るまでに、醤油の入った皿をひっくり返したり、柊のコップにビールを注いでみたりもしたが、きっと嬉しかったんだろう、常ににこやかな顔をしていた。
ハナはと言うと、最初は僕の後ろに隠れるようにもじもじとしていたが、途中、僕がトイレに立ち、帰ってきてみると、柊の隣に座り、ぴったりと体を寄せて甘えていた。
お陰で僕の席はなくなってしまった。
柊も嬉しかったらしく、優しい目を更に優しくさせ、ハナの頭を撫でている。
そうしながら、マサハルさんが話す、泥棒と格闘したという、少年マサハルの武勇伝を聞いていた。
僕とハナは何度も聞かされ、もういい加減うんざりしているのだが、柊は、声を上げて笑い、涙を流して喜んでいた。