マサハルさん
マサハルさんの話はここら辺りまでが事実だ。
これから先の話は、どうも、死んだじいちゃんの作り話らしい。
どうしてそんな作り話をマサハルさんに吹き込んだのか、まだ、じいちゃんが生きていた頃の、小さかった僕には理解できなかったが、今ではなんとなく理解できる気がする。
「オジサンはそっと近づいた……そして、中に見える赤い色……赤いカーディガンを着た泥棒に向かって叫んだんだ!」
実は、マサハルさんは泥棒と顔を見合わせ、あまりに驚き、お互いに「ひーっ!」と言った後に卒倒した。
小便も漏らしていたらしい。
泥棒は風呂場の窓から逃げようとして窓枠に引っかかり、外に植えていた南天の木に突っ込んだ。
直ぐに走って逃げ、田んぼに身を潜めていたが、庭に落ちた際にポケットや靴にたっぷり南天の実を収穫していたため、その南天の実を追いかけて来たじいちゃんにあっさり捕まった。