マサハルさん
それから何度か、柊は僕の家に遊びに来た。
マサハルさんは酔う度に武勇伝を語り、ハナはますます柊にベッタリになった。
お陰で僕らは、健全な交際を続けるはめになる。
そんな柊も、高校3年の夏になると、塾に通い始めた。
夏期講習だの、特別講習だの、学校の補講だの、そんなものに僕らの夏は邪魔をされた。
海、花火、水着、などとは程遠く、中華なべの大合唱と、延々とTVに映し出される甲子園、冷蔵庫にストックされた大量のガリガリ君だけが、僕の夏の思い出だ。
なかなか会えないことを、柊は何度も謝ったが、僕としては謝られても困る。
柊が求めるものがそれならば、柊らしく頑張ってもらいたい。
むしろ、謝られてしまうと、柊にとっての僕の存在理由や存在価値を……問うわけはなく、ただただ、ひたすらに寂しくて、ただただ、ガリガリ君を齧る日々を過ごしていた。
そして、虫歯になった。