マサハルさん

「ど、どうして!?」


マサハルさんは2本になってしまったズボンの線を、アイロンで直しながら、僕にそう聞いた。


「ん? 今年は受験だし、たぶん、九州の大学に行くと思うよ」


柊は都内の大学に行けないわけじゃない。

自分の意思で九州の大学に進学することを決めていた。

やはり、帰りたいという気持ちがあったんだろうか。

ちょっと寂しい。


「そ、そんなのは、理由にならないじゃないか!」


理由。

そう、理由。

そんなものは屁理屈であって、いつでも打ち消すことが出来る。

だけど、人間は、自分の行動に理由付けをしなければ動けない。

好きになるのも理由。

別れるのも理由。

僕らはいつだって、自分自身を納得させるために理由を考える。


< 46 / 181 >

この作品をシェア

pagetop