マサハルさん
「ど、どうして!?」
マサハルさんは2本になってしまったズボンの線を、アイロンで直しながら、僕にそう聞いた。
「ん? 今年は受験だし、たぶん、九州の大学に行くと思うよ」
柊は都内の大学に行けないわけじゃない。
自分の意思で九州の大学に進学することを決めていた。
やはり、帰りたいという気持ちがあったんだろうか。
ちょっと寂しい。
「そ、そんなのは、理由にならないじゃないか!」
理由。
そう、理由。
そんなものは屁理屈であって、いつでも打ち消すことが出来る。
だけど、人間は、自分の行動に理由付けをしなければ動けない。
好きになるのも理由。
別れるのも理由。
僕らはいつだって、自分自身を納得させるために理由を考える。