マサハルさん

「マサハルさん」

「なんだ?」


マサハルさんはレタスを千切り続けている。

それは既に、フォークでは扱えないほどに、細切れになっていた。

きっと、ドレッシングの中で、最後まで浮かび続けるだろう。


「さっき言ったこと……別にマサハルさん達のことを言ったんじゃないから……」

「む」


僕がさっき言ったこと。

プロセス。

会うことが別れへ向かう出発点だと決まっていて、それが避けられないことであるなら、その過程が大事だと、僕は言いたかった。

だけど、「夫婦」という過程を、「死による別れ」以外の方法を選択しようとしているマサハルさん達には、キツイ物言いになったのかもしれない。

ましてや、マサハルさんの方には、その選択を受け入れることに、まだ迷いがある。


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