忘れない
「へっくしゅっ!!」
昨日の夜。
風呂上りで髪の毛も濡れたまま、僕はベッドに寝転がっていた。
エアコンをつけたばかりで温まりきらない寒い部屋は、君のことを想うだけの自分の心の中と同じ温度の気がしていた。
僕は寒くて布団の中に潜り込んだけど、結局、濡れたままの髪を乾かすことなく眠りについてしまったんだ。
そのせいで――――。
「山口君、髪の毛ボサボサ」
登校してすぐに、クラスの女子がまだ寝ぼけたままの僕を見て笑う。
時間のなかった朝。
なんにもしないで家を飛び出してきたから、なりふりなんて構えなかった。
「マジでっ? くしゅんっ!!」
「風邪?」
僕のボッサな頭を見て笑ったさっきの女子が、返事をしながらくしゃみした僕を、またクスクス笑っている。
風邪?
そうかも……。
「へっくしゅんっ!」
やたらと出るくしゃみをまた笑われる。
てか、昨日のことを考えたら風邪をひいていてもおかしかない。