忘れない


「横にならなくて平気?」

薬を見つけ出した君は、保健室にあるポットからカップにお湯を少し注ぐ。
そのお湯に水を足し、薬と一緒に僕へと差し出してくれた。

「ありがと……」

ズズッと少し鼻をすすり、僕はカップを受け取った。

そうして、思う。
こうやって、君が僕の傍にいることが不思議だと。

君には、あの彼がいる。
だから、こんな風に二人で話ができるなんて本当に夢みたいだ。

二人っきりの保健室。
距離の近い君と僕。

夢心地で頭の中は、ふわふわ ゆらゆら。
なんだか、凄く気持ちいい。

「あっ、山口君っ!?」

ふわふわ、ゆらゆらしていたのは、どうやら熱のせいらしい。
椅子からずり落ちそうになった僕の体を、君が必死に支えてくれる。
朦朧とした頭で、僕はしっかりしなきゃと体勢を立て直した。

「……ごめん……。薬……飲んだら治る――――……」

情けなくも、僕の意識はそこで途絶えた。


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