モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

異変―沙羅


外の様子を見にいった
朔夜は、しばらく
待ってもなかなか
戻ってはこなかった。

「お嬢様、なにか
お飲みになりませんか?」

「ううん。大丈夫。
…それより、結界が
消えたって…。」

モントリヒト城を
凍夜と朔夜が
住処にして以来、
城の敷地には
二人の力で張った
結界がある。

二人と従僕以外には
沙羅と姫乃しか
自由に出入りできないと
いうその結界は、
赤い月の夜だけ
その効力を失うと
沙羅は聞いていた。

「今日は、黄色い
お月さまなのに。」

「ですが、確かに、
マスターと凍夜様の
結界が突如として
消えました。」

「どうして…。」

「わかりません。
わかりませんが…。」

考え込むような
天明の言葉の続きを、
黎明が引き継いだ。

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