モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

「強い力を持つ
シスターの術や結界は、
並の吸血鬼では
太刀打ちできません。」

「…朔夜様、
大丈夫かな…。」

「大丈夫です、お嬢様。
マスターは、少なくとも
並、ではありませんので。」

「そうなの?」

「はい。マスターは、
お強いですよ。
凍夜様ほどでは
ありませんが、
それでも人間には
決して引けを
取らないほどの
身体能力をお持ちですし、
なにより、マスターは
血を操ることにかけては
どの吸血鬼よりも
優れていらっしゃいます。」

「そうです。マスターは、
これまで敵対する相手に
挑まれて怪我を負った
ことはほとんどありません。
ですから、例え侵入者で
あっても何の心配も
要りません、お嬢様。」

たった一度、
天使の祝福(アンゲロス)に
よって、シスターに
捕えられたときを除けば。

その話を、天明と黎明は
故意に伏せた。

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