モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
「…大丈夫ですか?
お嬢様。」
「お加減が
悪いのですか?」
ずっと沙羅の様子を
見ていた黎明と、
お茶を淹れてくれた
天明に、頭を隠したまま
なんでもないの、と答える。
…そう、なんでもない。
朔夜にとっては、
大したことじゃ
ないはずだ。
姉の姫乃だって
沙羅の頬や額に
口づけることは
しばしばあるのだから、
義兄の朔夜が
同じことをしたって
なんら問題無いはず。
朔夜にとっては、
いつも通りの
甘やかしの延長だろう。
そう、朔夜に
とっては。
だけど。
沙羅にとっては、
どういうわけか
そうはいかない。