モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

少しの間、固唾をのんで
城を見ていた朔夜は、
我に返って城内へと
駆けこんだ。

城の変貌も
一大事だが、
それよりも重要な
ことがある。

侵入者がいるならば、
そちらを先に
処理しなければ
ならない。

間違っても、
沙羅や姫乃に害が
及ぶ事態だけは
阻止しなければ。

急ぎ自身の部屋に
戻ると、部屋は
もぬけの殻だった。

聞こえたのが
姉の悲鳴と
認識したのなら、
沙羅は当然姫乃の
もとへ向かったのだろう。

凍夜と姫乃の部屋の
ある階へ走ると、
姫乃の部屋に駆け付けた
状態のままの沙羅が
酷く驚いた顔で
立ち尽くしていた。

すばやく彼女の
無事を認めて、
そのまま部屋を
のぞきこんだ朔夜は、
沙羅と同じく
その光景に目を
見張った。

侵入者らしきものは、
いない。

ただ、そこには、
珍しく目に見えて
狼狽し、自身の妻を
抱く凍夜と。

その腕の中で
贖罪の言葉を繰り返す、
錯乱状態の
姫乃の姿があった。
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