モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

沙羅とアルカが振り向けば、
今、配達から帰ったばかりの
アルカの兄が、物知り顔で
立っていた。

「シエル。おかえりなさい。」

「お帰り、シエル。」

「アル、もうちょいすれば
ひと雨来るぞ。
掃除が面倒だから、
今日はもう、休業しようぜ。」

「無茶言うなよ、もう。」

そんなやり取りをしながら、
シエルは素知らぬ顔で
沙羅のケーキをつかみ、
口に運んでしまった。

「あ…わたしのケーキ…。」

「シエル。なんでわざわざ
沙羅のケーキを食べるんだよ。」

「だって、お前。
こいつ今日、何十個目だよ。」

「…それは…。」

シエルの問いかけに、
アルカは言葉を濁した。

ちらりと目を向けた
厨房の隅には、
沙羅にだしたケーキと
ほぼ同じ数の皿が
見上げるほど積まれている。

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