モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

「…あまり…
見ないで…。」

姫乃の瞳を見つめ
続ける凍夜の視線から、
姫乃は逃れるように
顔をそむけた。

視線を合わせようと
覗き込むと、彼女は
きつく瞳を閉じる。

その目が嫌いなのかと
尋ねたが、姫乃は
何も答えなかった。

「…昨日は何も
食べなかったね。
今日は、何か
食べてもらうよ。」

「…食べたくないの。」

「食べなければ、
無理やり僕の血を
飲ませる。」

「…。…食べるわ。」

吸血鬼の花嫁という
凍夜の眷族となった
姫乃の体に、
凍夜の体液は強い
影響を及ぼす。

花嫁にとって
夫の吸血鬼の血は
万能薬といっても
いいほどのもので、
それさえ与えられれば、
人の食事など取る必要は
なくなるほどの
効果がある。

しかし、不老長寿と
なったこと以外は
普通の人間とほとんど
変わらない姫乃にとって、
血の味はどうしても
慣れないらしく、
姫乃はこの二年の間、
凍夜の血をほとんど
飲もうとしなかった。

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