モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
「なに、勝手に沙羅に
やらせてるの?
僕が持っていく。」
「キミは遠慮というものを
知らないのですか。
丸一日姫乃の
そばにいたキミと
違って、沙羅は
丸一日様子もわからず
心配していたのですよ。」
「そんなの、僕には
関係ない。」
そう反論はして
みたものの、さすがの
凍夜も本気で沙羅の
邪魔をする気にはならず、
ため息交じりに
そばの椅子にかけた。
「ほかに入用なものは?」
「…特にない。
ただ、屋敷のガラスや
鏡をなんとかしておいて。」
「…あの瞳ですか?」
「そう。」
「…とても、美しい
色でしたね。
ちらと見えただけでしたが。」
「本人は嫌がってる。」
「わかりました。
すぐに、どうにかします。」
そう言って、席を立った
朔夜に、凍夜がふと
思いついたように声をかけた。