モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
二章
女王の死―朔夜
「モントリヒト公爵家の
方で有名なのは、
やっぱりフラン様ねぇ。」
艶めかしい手つきで
朔夜のシャツのボタンを
留めながら、女は
うっとりとつぶやいた。
「フラン?」
「ええ、フラン様。
とても紳士的で、
素敵な方で、子ども
心にときめいたわぁ。」
「おや。キミの口から
他の男に見惚れた話を
聞くのは、少し
妬いてしまいますね、
メリッサ。」
ボタンを留め終えた
彼女の手をつかみ
その指先に口づける。
「うふ。今はノークス様が
いちばん素敵よぉ?」
朔夜のその行動に、
メリッサはいつも通りの
営業スマイルを向けた。
営業スマイルと
わかっていても、
その仕草はさすが
高級娼婦と言ったところで、
つい今しがた
食事も交合も
終えたばかりだというのに、
食欲と情欲を
掻き立てられる。