モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
「これは…。」
何度も何度も鳴り止まない
鐘の音の意味に
朔夜が気付いたのと、
部屋のドアが叩かれたのは
ほぼ同時だった。
「はぁい?」
「入っていいかい?」
「かまいませんよ。」
入ってきたのは、
この娼館の主、シプレだ。
「悪いけどね、旦那。
今日は店じまいだ。」
「えぇ?どぉしてぇ?」
初老の女主人の一言に、
朔夜ではなくメリッサが
不服の声を上げた。
「これは、やはり
追悼の鐘ですか?」
「そうだよ。」
「どなたがお亡くなりに?」
「…女王陛下さ。
二日前に、病でぽっくり
逝っちまったらしい。」
「…二日前…。」
二日前と言えば、
姫乃とモントリヒト城に
異変が起こった日だ。