モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
女王の死―沙羅
遠くで、延々と
鳴り響く鐘の音に
耳を傾けていた
沙羅は、黎明が
食器を下げる音で
我に返った。
朔夜はなにも
言わなかったが、
姫乃がきちんと
食べ終えるまでの
見張り役として
送り込まれただろう
沙羅としては、
姉が残さず食べて
くれたことに
とりあえず安堵する。
タイミングを合わせて
用意しておいた
ティーセットで
お茶を入れると、
姫乃は柔らかく
微笑んでくれた。
「…あなたの
淹れるお茶は
ほっとするわ。」
そう言って
いつものように
笑ってくれたから、
沙羅はやっと
緊張を解いた。
今、こうして
目の前にいつも
どおりの姫乃が
いてくれるだけで、
すべてがどうでも
よくなってしまう。
姫乃に対する
不満も疑念もすべて。