モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
「…商品の品質管理…って。
ようするに、店の
女の子たちを労って
あげるってことでしょう?
普通に言えばいいのに、
なんでわざわざ誤解を
招くような言い方
するんだか。」
苦笑いする弟を
無視して娼館に向かう。
通りの角を曲がった
ところで、シプレの
視界に見慣れた
紅が横切った。
「…ローラ!」
「あ、シプレさん。」
呼びとめれば
深紅の髪の娘が
振り向き、こんばんは、と
頭を下げる。
「喪中だってのに、
仕事帰りかい。」
「あ、いいえ。ちょっと、
頼まれごとがあって…。
今から、行くところ
なんですけど。」
「急ぎかい。」
「いいえ。
明日の朝までに
ちょっと届ける
ものがあるだけです。」