モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

そういって、ローラは
手の中にあるものを
大事そうに
ひと撫でしてみせた。

つられるように
視線をむけた
その手の中のものは、
なにか赤黒いモノで
満たされた
小瓶にみえたが、
シプレがよくよく
見ようとすれば
ローラはハッとして
小瓶を懐に隠してしまう。

「…。そうかい。
じゃあ、ちょっと
一緒にきな。
聞いてほしいもんがある。」

素直に従うローラを
引き連れて、シプレは
足早に自分の店の
裏にある娼婦たちの
居住区の目的の人物の
いる部屋に入った。

「あ、シプレぇ。
早かったのねぇ?」

いつもと変わらぬ
間延びした声で
出迎えた部屋の主は、
娼館一番の稼ぎ頭で
シプレの養女でもある
メリッサだ。

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