モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

そういって笑う
メリッサに、
ローラも小さく
微笑み返した。

「ありがとう、
メリッサ。
…シプレさん、
わたし、そろそろ
いきます。」

「ああ。」

「えぇ?もう少し
お話していけば
いいのに。」

いつものローラなら
用事の最中に
呼び止められた
からといって、
せわしなく帰ろうと
したりはしない。

不思議そうに
不満を口にする
メリッサを笑顔で
また今度ね、と
あしらうローラの
懐にシプレの
視線が留まった。

この娘が、何よりも
優先するのは、
いつだって公爵家の
若様に関することだけだ。

ローラのせわしない
態度は、その用事が
この街かその周辺の
どこかに身を潜めて
いるだろう若様と
かかわりがあると
確信させるには
十分だった。




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