モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
しかし、廃墟と化したはずの
モントリヒト城の内外には、
不思議なことに火事で
焼けた痕跡は見当たらない。
何の損傷もなく、
何事もなかったかのように、
悠然とたたずむ城。
まるで、万全の状態で
城主の帰りを待ちわびて
いるかのように。
「朔夜様?」
「あぁ…すみません、
少し考え事をしていました。
…姫乃のことで盛り上がった
という話でしたね。」
「はい…。…なにか、わたし、
変なことをいった?」
「いいえ。変なことは
特にありませんよ。」
「退屈だったら、なにか
別のおはなしを…。」
「気を使う必要もありません。
僕は楽しそうに話すキミの話を
聞くのは好きですよ。」
にっこりと微笑めば、
沙羅はうれしそうに
はにかんだ。