モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
凍夜と朔夜が
踏み込めない場所に
足を踏み入れられるのは、
沙羅だけだ。
それも、二人と
違って何の含みもなく。
沙羅が何かしらの
引き金を引くことを
朔夜はもちろん、
凍夜も期待していた。
しかし。
「…駄目よ…。」
「!…どうして…?」
強張った顔でぽつりと
呟いた姫乃を見た瞬間、
義妹の言動への期待が
凍夜にとって好ましく
ない状況になるという
直感に変わった。
情報は欲しいが、
姫乃が苦しむのは嫌だ。
めずらしく食ってかかる
義妹をみながら、
情報をとるか、
姫乃の心情をとるかで
凍夜は板ばさみになる。
どう出るべきか
決めかねているうちに、
姉妹の言い合いは
激しくなった。