モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
「何も知らないくせに、
勝手なこと言わないで!!」
沙羅の頬を叩いた手を
握り締めて、姫乃が叫ぶ。
「お父様とお母様のこと、
何一つ知らないあなたが、
勝手なこと言わないで!!」
姉に手を上げられ
放心状態だった意識が、
少しずつ現実に
引き戻された沙羅は、
口元をぎゅっと引き結んだ。
目からは、先ほどとは
比べ物にならないくらいの
大粒の涙が、次から
次へと溢れだす。
「っ…!っっっ…っ!!
…お姉さまなんて、
大っっきらいっっっ!!」
普段からは予想も
つかないほどの大声で
そう残して、沙羅は
大広間から走り去った。
朔夜が慌てて
そのあとを追う。