モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

「…姫乃。」

後に残された
姫乃の目からも、
こらえきれずに
涙がこぼれた。

「…っ…。」

必死に嗚咽をかみ殺す
姫乃をそっと抱き寄せて、
落ち着かせようと
頭を撫でる。

「…どうして…
お父様が…お母様が…
あんなこといわれ
なくちゃいけないの…。」

ぽつりと漏らした
言葉に、凍夜は何も
答えなかった。

あの大人しい義妹が
あそこまで言ったのに、
それでも何も
言わなかった姫乃が悪い。

姫乃の父親が死んだ日と
沙羅の生まれた日を
逆算すれば、姫乃の
母親が身ごもったのは
姫乃の父親の死から
一年もたたないうちと
いうことになる。

当然、父親は
フランではない別の男。

夫が死んだばかりで
他の男の子を
身ごもった姫乃の母親。

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