モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
どこまで深く
考えていたかは
知らないが、
沙羅が言った言葉は
姫乃にとって母親への
侮辱にほかならない。
しかし、逆に大事な
妹にあそこまで
いわれても、
何も言うことの
できない姫乃の
心情を思えば、
姫乃が悪いと責める
言葉は到底言えない。
無言のまま、凍夜は
姫乃を宥めつづけた。
大事な妹と仲違いしてまで、
守らなければならない
秘密が姫乃にはある。
こんなにも姫乃を苦しめる、
その秘密はなんなのだろう。
そして自分は
いつになったら、
彼女をこの苦しみから
解放してやることが
できるのだろうか。
幾度とない強い焦燥感に、
凍夜は唇をかみしめた。