モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

「これはちょと…
すこしぼんやりして
包丁落としちゃって。
慌てたらうっかり
刃先に腕を当てて
しまったんです。」

「やぁん…痛そー。
気をつけてぇ?」

「ありがとう。じゃあ、
わたし、他にも回るところが
あるのでいきますね。」

支度を済ませ、立ち去る
女の姿を見送ったメリッサに
問いかけた。

「…彼女は?」
「あたしのお友達の
ローラ。シプレの弟さんが
やってる居酒屋の
看板娘なのよぉ。」

見たことのない娘だというのに、
朔夜は彼女に対して
なんらかの既視感を
感じた気がした。

「珍しい色ですね。
あんな美しい色の髪、
はじめて見ました。」

見事な深紅の薔薇色の髪。

あれほど目立つ容貌なら、
一目みただけでも
忘れないと思うが、
やはり記憶にはない。

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