モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
きょうだい喧嘩―沙羅
沙羅にとって、姉の姫乃は
姉であると同時に
母親に等しい存在だった。
これまでの沙羅に、
逆らうという選択肢はなく、
あるのは姉の言うことは
すべて正しいという
絶対的な確信だけ。
沙羅はそわそわ
しながら自分の部屋と食堂、
広間を行き来していた。
突然、姫乃に出くわさ
ないだろうか。
喧嘩はなかったことに
ならないだろうか。
姫乃の気が変わって、
全部教えては
くれないだろうか。
そんな様々な期待をして、
気がつけば何十回も
同じ場所を往復している。
絶対だと思っていた人に
初めて逆らったことが、
沙羅に罪悪感を
感じさせていた。