モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
朔夜のその言葉に、
凍夜は引っかかりを
覚えた。
筋が通らない話では
ないのだが、
以前に得た
何かしらの情報が
それを否定する。
しかし、その情報が
何かは思い出せず、
凍夜は一応朔夜の話を
肯定した。
「…無い話では、ないね。」
「ええ。それに、
沙羅は炎が苦手ですからね。
僕はそのトラウマが
モントリヒト城の火事と
無関係とは思っていません。」
それは凍夜も思った。
いまでこそ幾分か
落ち着いたが、
義妹のあの炎への
怖がり様は大きな火事に
みまわれるなどして、
よほど怖い目にあった
ためのものだろう。
そして、凍夜たちが
この地を訪れるまで、
この地域で大きな火事が
起きたという話があるのは
このモントリヒト城を
おいてほかにない。
「…それで、肝心の
公爵家の後継ぎは、
今どうしているんだろうね?」