モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
「今、思い出した。
キミは美人な
公爵夫人にみっともなく
鼻の下を伸ばして
くっついてまわってたね。」
「そんなわけないでしょう!!
母上のかわりに
お茶の相手を
してただけです!
女性を退屈させるなど
紳士にあるまじき
行為ですからね!」
図星をさされて
噛みつく朔夜を
鼻先であしらいながら、
凍夜は今しがた
思い出した相手の
ことを考えた。
なにか大事なことを
忘れているような気がする。
「…ウィスクム…。」
どうにか思い出そうと、
その名前をつぶやいた。
しかし、150年以上昔の、
吸血鬼として覚醒するより
更に前の少年時代の
ことともなると、
そうそう容易に
思いだせるものでは
なかった。