モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

「…?…朔夜さま…?」

まだ少しうるんだ瞳で、
自分を見つめてくる少女。

覗き込み、少し顔を
近づければ彼女はそっと、
頬に添えられた
朔夜の手を自分の
手で包んだ。

朔夜の手のぬくもりに
安堵した様子で、
沙羅は目を閉じる。



朔夜の視線が、
彼女の唇に留まった。

安心しきっている
その顔に、もう少し、近づく。

彼女の吐息を肌に
感じるくらい、近くに
顔を寄せて、唇を重ねる
瞬間を想像したところで、
閉じていた沙羅の目が開いた。

「…朔夜さま?」

「!」

名を呼ばれて正気にかえる。

今、自分は何をしようとしたのか、
朔夜自身が驚いて固まってしまう。

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