モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
「…スタ…。…マスター
…マスター、起きてください…。」
「…。」
唐突に従僕に呼ばれ、
朔夜の意識が一瞬逸れた。
ハッとして、目の前の
沙羅に意識を戻すが、
たった今まで目の前に
いたはずの沙羅が、
どこにもいない。
「…夢…。」
かわりに視界に
うつる風景から、
自分の部屋のベッドの
上にいることに気付いて、
朔夜は呟いた。
視界の隅には、主の
様子を窺う天明の姿がある。
「…。…っっ!
…なんて夢を…っ。」
自分に、呆れかえる。
頭を抱えながら、
どこまでが夢で、どこまでが
現実だろうと思考を巡らせた。
凍夜と話したあと、
沙羅の部屋で泣いていた
彼女をあやしたところまでは
確かに現実だった。
だが、あんな展開に
なるわけがない。