モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
そうだ、泣き顔が
可愛いと思っているうちに、
沙羅が泣き疲れて
眠ってしまったのだ。
確かに、潤んだ瞳も、
悩ましげな唇にも
少しばかり気を取られたが、
断じて、あんな状況には
なっていない。
…しかし、夢なら夢で、
余計な心配はないのだから、
天明がもう少し遅く声を
かけてくれれば、
いい思いができ…。
「…。…っっ!だからっっ…!」
そうじゃないだろうと、
自分の不埒な考えに
自身でつっこんだ。
「マスター…。
もう、いいですか。」
「なんです。…。
…こんな夜更けに、
なにごとです…?」
まだ、窓の外は暗い。
日が昇る気配すらない時間に、
天明は一体どうして
朔夜を起こしたのか。
「実は、お嬢様が…。」
天明の言葉に、朔夜は
慌てて部屋から飛び出した。