モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
炎の中の悪夢―沙羅
大好きなお姉さまの背中で、
沙羅はじっと黙って、
過ぎゆく景色を見ていた。
ときおり、視界に
真っ赤な髪の毛の女の人と、
少しだけ赤黒くなった
ところのある真っ白な布を
かぶった女の人が横切る。
「姫乃、ほんとに、
この火の海、ぬけられるの。」
「大丈夫。火が回らない
道は覚えてる。」
「…でも、この炎のおかげで、
あの怪物たちは襲って
こなくなりましたね。」
「きっとサクスは、
あの生き物の弱点が
火だって知ってたんだわ…。」
そんな、三人の話し声と
轟々と唸るような
炎の音が沙羅の耳に届いた。