モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
ちらりとお姉さまを
見ると、お姉さまの
お顔が涙でぬれていた。
向かいにしゃがみこんだ
赤い髪の女の人も、
泣いていた。
お姉さまが、沙羅を
強く強く、抱きしめた。
沙羅にわかったことは、
大好きなお母様と
とっても優しい
乳母(ナニー)のソフィと
父親のように沙羅を
可愛がってくれた
執事のサクスが
きっと、とてもとても
痛い思いをしたんだと
いうこと。
沙羅が思ったことは、
こんな怖いことが
すべて夢だったら
いいのにということ。
―そう。
こんな悪夢は、早く
覚めてしまえばいいのに。