モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
炎の中の悪夢―朔夜
天明の報告を受けて、
朔夜は慌てて食堂に向かった。
薄暗い室内に足を踏み入れると、
壁際に猫の姿の黎明と
小さくまるくなった
人影を見つける。
「…沙羅。」
きつく膝を抱え、頭を
垂れた沙羅から、返事はない。
「沙羅…。こんなところで
どうしたのです。
風邪をひいてしまうでしょう。」
ベットの中で悪夢にうなされ、
突然悲鳴を上げ、泣きじゃくって
部屋を出てしばらく城内を
徘徊したあと、やっと
ここに留まった。
天明にはそう聞いていたが、
それでも朔夜は、沙羅が
自分から話しを始めるまで
辛抱強く待つ。