モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
「…。…怖く…て…。」
ずいぶん長く黙りこんでいた沙羅は、
かがみ込み彼女の手
を優しくさすっていた
朔夜の手を握り返して、ようやく、
今にも消えてしまいそうな声で呟いた。
「凍夜の言ったことなど、
気にすることはないといったでしょう?
姫乃に嫌われるかもしれないことが
そんなに怖かったのですか?
…初めての姉妹ゲンカですしね。
無理もない。」
「ちがうのっ…!そうじゃ…ない…の…。」
朔夜の推測を、沙羅は慌てて否定する。
「あの、怖い…夢を、見たの…。また…。」
また、というのは以前にも見た夢ということか。
「姫乃がいなくなってしまう夢ですか?」
以前、沙羅が危険な目に会ったとき、
その日の夜に彼女が見た夢は
そんな内容だったことを思い出し、
たずねる。