モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜


「…ちがうの…。たぶん、
ずうっと小さい頃に見た夢なの…。
…お姉さまは、一緒で…。…お姉さまが、
炎の中をわたしをおんぶしてるの。
まわりには人がいっぱい倒れてて…
それで、まだ燃えてないお部屋に
お母様たちがいたんだけど…
血が…いっぱいで…動かなく、て…。」

沙羅の目から、ぼろぼろと
涙がこぼれおちた。

すでに真っ赤になっている目を
一層赤くしてしまう彼女を、
朔夜はあやすように抱きしめた。

「…ただの夢です。きっと、
姫乃とケンカしたことで
ストレスを感じているのですよ。
そういう状態の時は、些細な記憶が
重なりあって悪夢をつくりだして
しまうのだとか。」

「…。…夢なんだからって思って
寝ようとしたの…。でも…
眠るのが、怖くて…。」

優しく優しく背を撫でると、
沙羅は朔夜の胸に頭を寄せる。

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