モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
「さぁ、部屋に戻りましょう。
本当に、風邪をひいてしまう。」
軽々と沙羅を抱きあげれば、
子供が親にしがみつくように
沙羅は朔夜の首に腕をまわした。
その、色気とは無縁の様子に、
朔夜は密かに安堵する。
そんな朔夜に、沙羅は申し訳
なさそうに、耳元でささやいた。
「…あの…朔夜様…。」
「なんです?」
「あの…今日、一緒に寝ちゃ、
ダメ?…きゃっ!」
沙羅の言葉に、朔夜は思わず足を止め、
沙羅を落としそうになった。
「…朔夜様…?」
つい先ほどの夢が脳裏を
よぎって、朔夜は黙りこんだ。
思いだしてしまえば、今の今まで
意識をしていなかった沙羅の体温が、
気になりだす。
柔らかく温かい肌のぬくもりに、
13歳にしては発育のいい胸の膨らみ。
甘いベリー・シャムの香りにつつまれた、
愛くるしく不安げな容貌。
義妹として可愛いと思っていたものが、
別なものにすり替わりかける。