モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
「…メリッサを放してください。」
「駄目だ。この女は危険だ。」
「どこをどう見ても
危険なのはあなたです。」
「…この女からは、吸血鬼の残り香がする。
吸血鬼に支配された餌だ。
命令があれば、人を殺すこともある。」
「!」
「おい、女。お前の主はどこにいる。
吸血鬼を殺せば、お前は正気に戻る。
正直にそいつの寝床を教えれば、
お前に危害は加えない。」
ナイフはそのままで、シスターらしき女は
メリッサの口から手を外した。
「…知らないわぁ…。何の事だかさっぱり。
あなた、あたしのお客様に、吸血鬼が
いるって言いたいのぉ…?」
「しらばっくれるのか?」
「知らないものは知らないものぉ。
でもぉ、常連のお客様たちの
名前と職業は教えてあげられるけどぉ?」
モルゲンロート伯爵のことは言わず、
メリッサは協力をほのめかす
ようなことを口にした。
しばらく思案して、シスターはうなづいた。