モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
「…。ここに書いてあるのが
常連のお客様の一覧よぉ。」
落ち着いたメリッサが、近くにあった紙に
幾人かの名前と勤め先を書いてローラに渡す。
それをサーシャに手渡す間に盗み見れば、
モルゲンロート伯爵に関することは
何一つ書かれていなかった。
「でもぉ、営業妨害はやめてねぇ?
あたしの稼ぎにお店の娘たちの
生活がかかってるんだからー。」
「…吸血鬼かどうかの確認は一目見ればできる。
当たりがいれば、穏便にはいかないけどね。」
「…サーシャ…あなた、あの火事の後、
王都にいたんじゃ?」
「しばらくはね。そのあと、各地を旅してた。
…吸血鬼を確実に殺す方法を見つけたくて。」
「…。見つかったんですか?」
「…一応は。吸血鬼を即死させる猛毒がある。
今はそれを探してた。」
「猛毒…。」
「吸血鬼の花嫁と呼ばれる、
吸血鬼の眷族になった女の血。
それがあれば、花嫁の夫以外の
吸血鬼は簡単に死ぬ。」
ローラとメリッサは顔を見合わせた。