モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
今まで考えたこともなかった凍夜の浮気の可能性に、姫乃は一瞬で不安に落とされた。

「キミ、また姫乃に余計なことを吹きこんでるみたいだね。」
「凍夜。」

心臓が跳ねた。
まさに今、浮気してきたところだったら、どうしよう。

嫌な可能性が頭の中でぐるぐる回り始めて、姫乃は顔を上げられず俯いた。

「僕が浮気?キミじゃあるまいし。浮気して後ろめたい思いをしてるのはキミだろ。」
「僕を引き合いにださないでほしいですね。僕にはそもそも、浮気相手どころか後ろめたく思う相手すらいませんよ。」

朔夜の返答に、凍夜が一瞬呆れたように目を細めたが、俯いていた姫乃には見えなかった。

「…キミが鈍いってことはよくわかったよ。」
「は!?」
「それで?何の用で姫乃の部屋にきたんだい。」
「…っ…キミを探しにですよ。…目的が果たせそうです。すぐにいきますか?」
「先約があるから後で行く。」
「…こちらより重要なことがあるのですか。」
「あるよ。…今日中にはいく。準備はしておいて。」
「…。わかりました。用が済んだら言ってください。…では…。」

立ち去る朔夜の足元が俯いた視界から消えかけたとき、凍夜がささやいた。
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