モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

そっと、目をあける。

同時に部屋の扉が開き、
ひとつの人影が姿を現した。

微かに香る腐臭に、
女は眉をひそめる。

女の姿を認め、まっすぐ
こちらにその影は歩き出した。

腐臭を嫌悪したものの、
その行動に臆することはなく、
女はその人影の男を迎える。

伸ばされた手が、女の肌に触れた。

頬を撫で、首筋をなぞり、
夜着の下にある女の柔肌を
そっと愛でていく。

その感触が、記憶の中のものと
寸分たがわぬことに
決意が揺らぎそうになる。



自身の肌にふれるその手は、
ところどころが傷み、
もはや生き人のそれでないことを
はっきりと知らせているのに。

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