モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

「…東雲、凍夜は
どこに行ったの?」

「奥様。…申し訳
ありませんが、その
質問にはお答え
できません。」

申し訳なさそうに
答える東雲に、
姫乃はため息をついた。

マスターである凍夜に
東雲は逆らうことができない。

姫乃に居場所を話しては
いけないと命じられれば、
東雲はそれに従う。


「…察して、隠れたわね…。」


姫乃の性格からして、
諦めるわけがないと
わかっていたのだろう。

むぅ、と膨れる姫乃を、
東雲が意味ありげな
目で見つめた。

視線に気付いた姫乃に、
東雲は窓の外を見るように
目配せする。

凍夜の命令に逆らえない
東雲は、それでも姫乃に
味方してくれるらしい。

東雲に、イタズラめいた
笑顔を見せてから、
姫乃は大げさな音を立てて
凍夜の部屋のドアを閉めると、
クッキーを片手にいそいそと
上の階への階段を目指した。

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