モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
どうせなら、凍夜との仲を
深めることに気を砕いて
くれればいいのに。
考えれば苛立ちが
募ってくるから、
何度目かの寝がえりを
うちながら、凍夜は
思考を放棄した。
「凍夜っっ!!」
すぐ間近で嬉しそうに
凍夜を呼ぶ声が
聞こえた気がした。
幻聴をきくほど、姫乃が
恋しくて仕方ない自分も
どうかと思うが、今日はもう、
ここから動かないと
決めたのだ。
夕方まで、絶対に姫乃には
逢わない。
「寝てるの?凍夜。」
囁くように、様子を窺う声が
真上で聞こえた気がして、
凍夜は目を開けた。