モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
凍夜を覗き込む姫乃の
大きな深い海色の瞳と、
視線が交わる。
とうとう幻覚まで
みえているのかと思ったが、
凍夜の頬を撫でる
栗色の髪の感触は、
幻覚にしてはずいぶん
リアルだ。
「…姫乃。キミ、こんな
ところでなにしてるの。」
「凍夜を探しにきたのよ。」
「ここは屋根の上だよ。」
「窓からよじ登ったのよ。」
「僕の目が届かないところで
危ないことはしないって
約束したよね?」
「だって、凍夜がこんな
ところに逃げるから…。」
「逃げてない。」
「…隠れるから…。」
「隠れてない。」
「…。…こんなところで
寝てるから、わたしも
登ってみたくなったのよ。」