モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
「そうか…そうよね。
わたし、すっかり
忘れてたわ。
チェーニ国と
スヴェート国では
風習が違うのよね。」
「…ああ、なるほど。
この国では、誕生日に
本人を祝う風習が
ないんだね。」
それまで黙って
やり取りを見ていた
凍夜が、納得した表情で
そう言った。
その言葉に朔夜も、
この国の女性に誕生日を
尋ねたとき、なんで
そんなことを聞くのかと
不思議そうな顔を
していたことを思い出す。
凍夜と朔夜は、
隣国チェーニの出身だ。
チェーニでは、誕生日と
言えば誕生日の人が
生まれたことを祝って、
贈り物をしたり、
普段より豪華な食事を
囲んで団らんするのが普通だ。
凍夜と朔夜はチェーニ国の
モルゲンロート伯爵家の
生まれだから、誕生日には
たくさんの贈り物と
大勢の人間が招かれた
パーティーを開かれるのが
当たり前だった。