モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

「この国では、産んで
くれた人や育ててくれた人、
それから、恩のある人に
感謝の気持ちを込めた
贈り物をするのが普通ね。」

モントリヒト領は
スヴェートとチェーニの
国境ぎりぎりにあるため、
人によってはチェーニの
祝い方を知っているものも多い。

姫乃は母親がチェーニの
出身の為、どうやら
風習自体は知っていたようだが、
幼いころからの祝い方は
スヴェートの方法に
則っていたため、
すっかり忘れていたらしい。

「ふぅん。…でも、去年は
確かスヴェート国女王の
生誕祭があったはずだけど。」

「生誕祭は、陛下のご生誕を
祝う面よりも、良き統治者を
お与えくださった先代陛下に
感謝をささげて敬うって
色が濃いかしら。」

姫乃はそう説明しながら、
窓の横の棚の扉を開けて、
小さな包みを三つ、
とりだした。

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